2011年8月24日水曜日

はたして放射能汚染地域は除染すれば住めるのか? 国は避難期間を明示し、移住による生活・コミュニティの再建を! 原発は安いと言ったのは誰だ!・・・

木村建一@hosinoojisan



はたして放射能汚染地域は除染すれば住めるのか?


 国は避難期間を明示し、移住による生活・コミュニティの再建を!




原発は安いと言ったのは誰だ!・・・



 本日のニュースで、何と言っても痛快だったのは、日頃テレビで、顔も見たくないし、声も聴きたくない人物が、○暴関係で、引退したニュースだった。

 マスメディア関係者は、おそらく知っていたのであろうが、視聴率欲しさに重用していたと思われる。

 地上波TVは、吉本等に独占された感があり、教育的報道番組などほとんどない

 これが日本の若者をダメにした一員であることを反省して、もう少しましな番組制作に取り組んでほしいものである。

 ついでに、製作費削減と言って、韓流ものを多用しつつあるが、これとて、日本文化を消滅しかねない要素を持っており、朝日、毎日、読売、日テレ等は、マスメディア関係者に十分考えてもらいたいものであるが、もう、金に目がくらんで、問題点すら気付かないような体質になっているのであろうか?・・・・

 よこしまなマスメディアが作り上げた問題のもう一つの弊害は、「政治」問題である。

 まあ、これは、小選挙区制という選挙制度によるものだが、いたずらに、面白く作り上げた報道で、政治家の質が低下してきたのも、マスメディアの責任と思われる。

 「天下の公器」を自称しているが、「転嫁の悪器」になっていることを自覚して欲しいものである。

 民主党の代表選挙問題を見るまでもないだろう。

 原子力関連問題で、考えさせられる記事があったので、以下に、二本記録しておきたい。



原発は安いと言ったのは誰だ

発電コストの試算を電事連に頼るな
2011年8月24日(水)日経ビジネス
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20110818/222160/?ST=nbmag
 前回、7月7日付本欄の「核燃料サイクルは破綻している」には数多くの反響と賛否両論のご意見をいただいた。今回はその続編を掲載する。
 恥を忍んで我が家の「電気ご使用量のお知らせ」(検針票)まで公開した結果、「電気代が2万円と言うのを見て、非常に高コストな生活をされているのだなと思いました」という、もっともなご指摘まで受けてしまった。そのご批判に応えるべく、というわけでもないが、我が家もご多分にもれず、この夏はできる限りの節電を励行している。
 7月分(6月16日~7月18日、33日間)は前年同月比15.6%減と、世間一般の目標である15%減をクリアし、8月分(7月19日~8月16日、29日間)に至っては同45.1%減という大幅な節電に成功した。これで胸を張って経済産業省の「節電アクション」の達成賞にも応募できようというもの。これもまた、昨年まで浪費しすぎていたから大幅に減らせるのだ、という誹りを免れないのは十分承知しているつもりだ。8月分はようやく370キロワット時、9441円と、一般世帯並みの消費量に近づいてきた。
原発のコストが知りたい
 当然のことだが、8月分の検針票を透かして見ても、我々が知りたい電気料金の詳細は掲載されていない。「上記料金内訳」の中身は、相変わらず「燃料費調整」と「太陽光促進付加金」の項目だけだ。政府や東京電力がこれからの値上げは不可避だというなら、利用者としては一層の情報開示の強化は不可欠だと言わねばなるまい。
 そこで、電気料金のカラクリについて、さらに追究してみることにした。我々が一番知りたいのは、「原発のコスト」である。東電福島第1原子力発電所の事故を経て、原発のコストは高まっているはずだ、と誰もが考えている。
 我々が解明したいのは、これまで試算に含まれていなかった、使用済み核燃料の再処理コスト(バックエンド費用)の残り半分や、電力会社から徴収する電源開発促進税を元手に原発立地地域に配分したエネルギー対策特別会計・電源開発促進勘定の予算などをどう試算に加えるか。さらには福島第1原発事故のような未曾有の災害がどのくらいの確率で起き、それが起きた場合の賠償費用を誰がどう負担するのか、といった様々な疑問だ。

出所 エネルギー・環境会議「コスト等試算・検討委員会(仮称)について」
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 それでは、追究の手始めに、今日まで政府や電力業界が金科玉条のように守り、「原発は安い」と主張する根拠となってきた「原発の発電コストは1キロワット時当たり5.3円」という過去の試算とはどんなものだったのか。それをおさらいしたい。
 この試算の原型が初めて公表されたのは2003年12月16日の総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)電気事業分科会のコスト等検討小委員会だった。当時、経産省担当記者として傍聴席にいた私は急遽、「原発発電単価1キロワット時5.6円、電事連試算、後処理を含め石炭の0.3円安」という囲み記事を日本経済新聞の夕刊にねじ込んだ。巨額のバックエンド費用を含めても、「原発は安い」と、電力会社の業界団体である電気事業連合会が言い切ったことに驚いたからだ。
 その記事にはこうある。「電気事業連合会は16日、使用済み核燃料の後処理費用を含めた原子力発電の発電単価を試算し総合資源エネルギー調査会小委員会に報告した。1999年公表の試算と運転年数などを同じに計算すると1キロワット時当たり5.6円で、石炭火力より0.3円、天然ガス火力より0.7円安い。(中略)電事連は原子力発電がコスト面で優位性を保っているとしている」
 そう、今では政府の試算であるかのように独り歩きしている数字だが、元々は電事連の試算だったのだ。そのころ、かつて原発を巡って競合関係にさえあった経産省と電力業界は紆余曲折を経て、すでに切っても切れない関係になっていた。経産省には発電のコストを試算するデータもノウハウも乏しく、試算はすべて電事連に丸投げしていたのが実態だった。
 念のために付言すると、「5.6円」という記事は誤報ではない。その後、翌年1月16日の小委員会で、電事連は試算を「5.3円」とさらに安く修正したのだ。それが1月23日の電気事業分科会でお墨付きを得て、今日に至るというわけだ。
 当時は青森県六ケ所村の再処理工場が建設中で、バックエンド費用がいくらかかるかが問題になっていた。やはり電事連が同小委に提出した試算によると、「原子燃料バックエンドの総事業費」は18兆8000億円。この試算がのちの「19兆円の請求書」騒動に発展する。
 当時は、この試算が全国の原発で発生する使用済み燃料の約半分しか処理できない六ヶ所再処理工場の能力を前提にしていることさえ、十分理解されてはいなかったが、とにかくこれを加えても原発は安い、というのが電事連試算の結論だった。
 改めて試算を見直してみれば、のちに独り歩きする「5.3円」というのは試算の中の1つの値に過ぎない。各電源の運転年数をすべて40年とした試算でも、原発は4.8~6.2円と幅をもって示している。「5.3円」は長期投資にかかる割引率(実質利子率)を3%、原発の設備利用率を80%と仮定した場合の数値だ。ウラン調達などの前提となる円相場は2002年の平均で1ドル=121円98銭、原油相場は1バレル=27ドル41セントだった。
 しかし、外部環境はがらりと変わり、今となっては「5.3円」が独り歩きできるような状況ではなくなった。デフレに対応した超低金利政策は今も続く。円相場は再び最高値を更新し、原油価格は80ドル台の高値圏で推移している。相次ぐ原発停止で7月の原発稼働率は33.9%まで低下した。こうした状況変化を諸々考え合わせれば、7年前の試算がもはや何の根拠にもならないことは明々白々だ
 電力会社も時々刻々と変化する市場価格と相対し、燃料費調整制度で利用者に負担を転嫁しているのに、発電コストを問うと「これしかありません」とばかりに7年前のコスト試算を通用させていたこと自体が奇妙奇天烈だ。これも地域独占のなせる業だったのだろう。
消えた審議会
 東日本大震災の前日。3月10日、経産省・資源エネルギー庁でこんな会議が開かれていたことはほとんど報道されていない。
 「既存の発電コストの試算方法についての見直しの必要性について検証を行った上で、近年の資源燃料価格の動向等を踏まえ、発電コストの試算を総合的に検討する」
 「電気事業分科会・発電コスト等試算ワーキンググループ」の設置趣旨の一部である。大震災と福島原発事故という天啓を受ける前から、発電コストの試算が古すぎるという問題は俎上に上がっていたのだ。
 ただ、問題は会議の目的が、化石燃料価格の高騰や、原発の運転年数の延長を踏まえ、「原発のコストは安い」という命題を改めて確認することにあったのではないか、という疑いを拭い切れないことにある。同ワーキンググループは、エネルギーや経済学の専門家6人をメンバーとし、やはり電事連の理事・事務局長がアドバイザーとして名を連ねていた。新たに地熱発電のコストを試算する方針は明示していたが、再生可能エネルギーのコストも本格的な試算の対象にするかは曖昧だった。
 月に1回のペースで開き、6月に報告書をまとめる予定だった同ワーキンググループだが、幸か不幸か、初回会合を開いただけで宙に浮き、その役割を「エネルギー・環境会議」(議長・玄葉光一郎国家戦略担当相)の下の「コスト等試算・検討委員会」に委ねることになった。政府は同委の試算を、年末にまとめる「革新的エネルギー・環境戦略」に反映させようとしている。2030年に原発依存度を50%に高めると定めたエネルギー基本計画に代わるべきものだ
 7月29日のエネルギー・環境会議に提出された「コスト等試算・検討委員会(仮称)について」という4ページの資料によると、同委は新たな視座に立った試算を行い、検証するため、(1)透明性の確保、(2)中立性の確保、(3)具体的なデータに基づく検討、(4)財務面、技術面、制度面など様々な分野の有識者参画、(5)国際比較の観点の付与――を基本方針にするという。
 その上で、特に考慮すべき重要項目として、原子力の広告費、バックエンドの精査、事故対応費用、追加的安全対策費用、燃料費上昇、再生可能エネルギーの技術革新・量産効果による価格低下などを挙げている。試算方法についても「従来の運転年数発電方式か、有価証券報告書ベースか」と併記し、大島堅一・立命館大学教授が採用した、各電力会社の有価証券報告書に基づいて実績値を検証する手法を考慮に入れることを明記した。
 これらはすべて、過去の試算から抜け落ちていた視点だ。
 例えば、(5)の国際比較の観点から、参考になる1つの小論がある。日本エネルギー経済研究所が2009年2月にまとめた「海外の試算例にみる原子力発電のコスト評価」がそれだ。
米国の試算では原発のコストが高い
表 各国の発電コスト試算例
フランスやフィンランドの試算では原発が火力よりも安い

評価機関(年) 単位 石炭火力 ガス火力 原子力
電気事業連合会(2004) 円/kW    5.7      6.2     5.3
米MIT(2003)  $/MWh    42       41     67 
米シカゴ大学(2004)$/MWh  33~41    35~45    51
米CBO(2008)  $/MWh    55     57     72
仏DGEMP(2004) €/MWh    33.7     35.0     28.4
フィンランド Tarjanne & Luostarinen(2003)
€/MWh    44.3    39.2 23.7

出所 日本エネルギー経済研究所「海外の試算例にみる原子力発電のコスト評価」

 各国の発電コストの試算をまとめた結果が、上の表だ。原発推進の立場を取ってきたフランス、フィンランドの試算は石炭、ガス火力よりも原子力が安いという結果だが、一方で米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)、シカゴ大学、米議会予算局(CBO)の試算はいずれも原子力が高いという結果である。
 例えば、CBOの試算では割引率を8~14%と設定しており、電事連試算の0~4%という前提とは異なることが、日米の試算に大きく差が出る原因だと分析している。米国では原発を建設する際の資金をファイナンスできるかどうかがプロジェクトの成否を左右する実態をよく表わしていると言える。これに対して日本はこれまで潤沢なキャッシュフローと高い格付けを持つ電力会社が投資主体だったので、割引率の低い試算に妥当性があったが、電力会社の財務体質がすっかり悪化した今では、割引率も高めに見積もらざるを得ないだろう。従来の試算よりも原発の稼働率を低く、耐用年数を短く設定せざるを得ないとすれば、投資回収期間は自ずと短くなり、割引率は当然上がるだろう。
 最近、電事連と同じような手法で、各電源の発電コストを試算した地球境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾氏(東京大学大学院総合文化研究科客員教授)によると、現状では原発は石炭火力とほぼ同じ1キロワット時当たり8~12円という結果が出た。秋元氏は原発の稼働率を火力と同じ80~90%程度とやや高めに見積もる一方、バックエンド費用を1キロワット時当たり1円程度とみて算入している。試算値には含めていないが、原発の立地交付金についても1キロワット時当たり0.3円と推計しており、今後の議論の参考になろう。原発のコストについては「電事連の試算ほど安くはないが、優位性が少なくなっているのは事実」という立場だ。地球温暖化対策の影響で二酸化炭素の排出量が多い石炭のコストが安くなっているため、相対的に原発の優位性が保たれている面もあるという。「かといって原発に代わるベース電源として石炭火力というご時世でもない」という指摘ももっともだ。
 秋元氏は「まずコストにどこまで含めるか、どこに不確実性があるか、どの部分で意見が違うかを明らかにする必要がある」とも指摘する。これまで電力業界のベールに包まれていたデータを透明性、中立性の観点から公開し、誰でも検証できるようにする。経産省や電力業界の影響力が及ばない独立性のあるメンバーにより、新たな視座からの検討作業を進めてほしい。これは菅直人首相が退陣しようとも、誰が国家戦略担当相になろうとも貫徹してもらいたい課題である。


DOL特別レポート
【第307回】 2011年8月24日
小澤祥司
http://diamond.jp/articles/-/13691

はたして放射能汚染地域は除染すれば住めるのか?

 国は避難期間を明示し、移住による生活・コミュニティの再建を


放射性セシウム134、137との闘い

――中長期間の避難は避けられない
 東日本大震災に伴う原発事故から5ヵ月以上たち、警戒区域・計画的避難区域を含め10万人近い人々が避難生活を余儀なくされている。多くはようやく仮設住宅や民間アパートなどで仮住まいを始めた。しかしこれまでのように広い敷地のある住まいではない。バラバラに住まざるを得なくなった家族も少なくない。避難生活による精神的、肉体的な影響も出始めている。農作業で体を動かすことがなくなり、肥満気味になったり血糖値が上昇したりする人もいるという。何より避難を強いられながら、十分な補償が得られていない。いつ帰れるのか見通しもなく、いたずらに時間が過ぎていく。それがまたストレスになっている。
 筆者は3月に飯舘村周辺の放射能汚染調査に加わって以来、ほぼ毎月現地での線量調査を続けているが、村南部には現在でもまだ毎時10マイクロシーベルトを超えるような場所がある。文科省の発表では、浪江町の赤生木椚平で毎時35マイクロシーベルトを記録している(7月29日)し、より第一原発に近い大熊町小入野では毎時81マイクロシーベルト(7月18日)というきわめて高い値だ。これは屋外で8時間を過ごすと仮定した文科省の基準でも、年間500ミリシーベルトの外部被曝を受けることになってしまう。
 事故そのものが収束していない現在、新たな放出による降下も多少はあると思われるが、それを考慮しないで考えてみる。大量放出から5ヵ月以上がたち、ヨウ素130などの短寿命核種はほぼ消失していて、今後はセシウム134(半減期約2年)とセシウム137(同約30年)との闘いになる。
 今回放出された両者の放射能比はほぼ1対1だが、線量率への寄与度は134が137の約2倍あるので、134の放射能が半減する2年を過ぎると線量率は3分の2になる。134の放射能がほぼ無くなり137の放射能が半減する30年後には6分の1~7分に1になると予想される。雨による流出や地下への沈降も考慮すると、10分の1程度には減少するかもしれない。それでも現在毎時10マイクロシーベルトの場所は毎時1マイクロシーベルトに留まる。年間の外部被曝量は、ICRP基準で通常時の1ミリシーベルトを大きく超える5ミリシーベルトになってしまう。これでは帰還は短期的には難しいと言わざるを得ない。
はたして除染は万能なのか?

地域の線量や、都市と農山村による違い
 こうした中、国は早期帰還を目指して国の責任で除染のための法律を整備する方針を示した。また福島県内に専門の除染チームを置くとも伝えられている。メディアも一部の学者も除染の必要性を訴える。しかし、除染の効果を一様に考えるべきではない。

 都市部では土に覆われている場所は、公園や道路脇、学校の校庭や人家の庭などに限られる。セシウムは土の表層に留まっているので、5~10cm程度をはがし、また建物や道路、コンクリート表面は洗浄すれば、放射性物質をある程度除去することは可能だ。雨樋の下、側溝などに見られる“マイクロホットスポット”(写真)も、近づけば線量が高いものの、含まれている放射性物質の量がそれほど多いわけではないので、その部分だけをどければ、線量を低減できる。このように、都市部で比較的低線量の地域であれば、除染は一定の効果が期待できる。
 しかし、今回の福島第一原発事故で高濃度に汚染された警戒区域や計画的避難区域は、ほとんどが農山村である。5月に飯舘村では、放射線安全フォーラムというNPOが実験的に高線量地区にある民家の除染を行った。かなり大々的な除染であったが、期待したような結果は得られなかった。もし効果があったとしても、民家敷地だけの除染では、周辺に放射性物質が残ったままで、家の中では暮らせても、農作業を含めて日常的な生活がすぐに営めるようになるとは思えない。
 飯舘村では一部の農地を使って農水省の実証試験が行われているが、よく言われる「ヒマワリやナタネにセシウムを吸着させる」話にしても、すでにチェルノブイリ原発周辺で試みられており、限定的な効果しかないことはわかっている。それ以外の方法についても「実験段階」に過ぎない。それに、除染を行っても放射能は消えるわけではなく、どこかに集めて安全に管理しなければならない。
莫大な予算がかかる除染
やっかいな森林の表土除去
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 たとえば、土を除去するなどの除染方法にどのくらいコストがかかるだろうか。文部科学省が公表している汚染地図(図)を元にした概算であるが、半減期約30年のセシウム137が30万ベクレル/m2以上の土地のうち(チェルノブイリ周辺では55.5万ベクレル/m2以上が移住義務ゾーン、18.5万ベクレル/m2以上が移住権利ゾーン)、農地は1万5000ヘクタール、林野は8万ヘクタール程度あると思われる。
 農水省では過去のカドミウム汚染水田などで除染を行う「公害防除土地改良事業」で、天地返し(上層土と下層土の入れ替え)による除染を行っている。公害史に詳しい國學院大学の菅井益郎教授によれば、この費用は平均して10アール(1反)あたり300万円だという。そのまま当てはめれば全体で4500億円の除染費用がかかる。加えて今回の放射能汚染では、農道や水路、畦畔の除染も必要だ。

 しかも、現地は農地と森林が一体となった環境である(写真)。その森林に降った水を灌漑用水に使っている。セシウムを含む落ち葉も舞い込んで来るであろう。除染は農地と森林をセットで行わなければ意味がない
 森林の除染は農地よりもやっかいだ。セシウムは葉や樹皮に吸着され、地表では厚く積もった落葉落枝や腐葉土に染み込んで、その下の土壌にまで達しているからだ。確実に除染するには樹木を皆伐し、地表をかなり厚く削り取るしかなかろう。この費用は、農地の数倍かかるだろう。さらにこれに除染した土などの処理費用が加わる。これには広大な面積の管理型処分場が必要になる。居住区・建物の除染を含めて、全体の費用が10兆円を超えると見積もっても大げさではあるまい。しかも除染は確実に農地の質を低下させ、広範囲の森林の皆伐、表土除去は地域生態系に壊滅的影響を与える。
除染が終わるまで数十年かかり
汚染土壌などの処分も不透明
 予算的にもマンパワー的にも、一度に除染できる面積は限られている。上流側から少しずつ、順繰りに行っていくとして、全体の除染が終わるまでには、何十年もかかると思われる。実際、富山県の神通川流域・黒部地域では、30年経ってもカドミウム汚染土の除去が終わっていない。
 汚染土壌などをどこでどのように処分するかについても、これからの(おそらく長い)議論になる。実験に数年、処分方法や処分地、方針・スケジュールを固めるまでさらに数年あるいはそれ以上。本格的除染に取りかかるのは、それからだ。その間にも避難住民の困窮は続く。
 このように、汚染地域の除染には莫大な費用と長い期間がかかる。こうした現実的な問題をあいまいにしたまま、国は法律を作り、除染を進めるという方針だけを示している。
 帰還が適う日まで一体どれほどの間、待てばいいのか、いま避難住民がいちばん知りたいのはそのことだ。
 国は、警戒区域の一部について避難が長期化することをようやく認めた。しかし、すぐに戻れないのは原発周辺地域ばかりではない。重要なのは、避難住民がいまのような中途半端な状況から次のステップに進めるようにすることである。汚染度別に避難期間を明らかにし、避難が中長期に及ぶ地域に関しては移住地を用意し、そこでの生活や仕事の再建の道すじを示すべきだ。移住地で暮らしながら、線量の下がった区域から段階的に帰還する復興プランも必要になる。
 これは理不尽にも突然故郷を奪われた人々にはつらい選択であろう。しかし、このままずるずると仮住まいの避難期間を引き延ばしては、困窮が増すばかりだ。国策として原子力発電を進めてきた国と事故を招いた東京電力が、直ちに取り組まなければならないことである。
小澤祥司
環境ジャーナリスト/日本大学生物資源科学部講師
2011年3月以降、飯舘村の汚染調査、住民の支援に取り組む。

関連記事:【福島県飯舘村・現地レポート】
持続可能な村づくりを奪われた村
――原子力災害の理不尽な実態

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・・・・・本日は、これまで・・・・・

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