2013年4月13日土曜日

汚染水「漏れたら直ちにタンクへ」 東電、計画時に説明

木村建一@hosinoojisan

汚染水「漏れたら直ちにタンクへ」 東電、計画時に説明

TPP交渉、保険・自動車など並行協議 日米合意発表
民主主義を機能不全に陥らせた「一票の格差」がもたらす3つの弊害


TPP問題、アメリカとの事前交渉で、アメリカ側が、「満額回答」を得たようである。

この問題、うがった見方かもしれないが、アメリカと中国・北朝鮮による、「密約」で、「日本周辺危機」を煽り、軍事的「危機感」を日本政府に感じさせ、「日本防衛」の必要性から、アメリカの利益に繋がるTPP交渉を有利に進めるための策謀ではないかと思料する次第である。

現実に、事態は、そのように推移したからである。

しかし、これは、前兆に過ぎず、アメリカの本音は、簡保資産(300~400兆円)の略奪であり、更なる策術が展開されることとなろう。

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ダイヤモンド誌に掲載された、慶應義塾大学教授 小林良彰氏の指摘は面白いので、全文記録した。

以上、雑感。



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汚染水「漏れたら直ちにタンクへ」 東電、計画時に説明
2013年04月12日21時56分 朝日新聞 http://www.asahi.com/national/update/0412/TKY201304120400.html
 【西川迅、香取啓介】東京電力福島第一原発放射能汚染水漏れ事故で、東電は、昨年夏に開かれた国の専門家会合で地下貯水槽の建設計画を示した際、漏れたら「直ちにすべての汚染水をタンクに移す」と説明していたことが分かった。実際は発覚後にタンクの手配を検討し、いまだ汚染水の移送を始められていない。  旧原子力安全・保安院は昨年8月、福島第一原発の安全性をチェックするため専門家による意見聴取会を開いた。この場で、委員から地下貯水槽の遮水シートが破れた場合の対応を問われ、東電の担当者は「実は空のタンクを用意しておいて、検知した瞬間に、すべてそちらに移送するという計画」と説明。保安院は計画を了承していた。  東電は、5日に2号貯水槽で汚染水漏れが初めて見つかった後、原子力規制委員会の指示もあり隣の1号貯水槽への移送を決定。6日早朝から水を移し始めたが、1号貯水槽と3号貯水槽でも相次いで漏れが発覚した。このため貯水槽の使用を断念して、10日になってようやく新設する地上タンクや、ほかの用途に使うタンクに移すことを発表している。  東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は12日の会見で「空のタンクはその時点で水の受け入れが可能な場所という意味。ほかの地下貯水槽も含まれる」と釈明。原子力規制庁の森本英香次長は同日の会見で「東電が意図したのか、ミスだったのか事実関係をしっかり詰めていく必要がある」と話した。

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「安倍さん、論理的矛盾じゃないか」生活・小沢氏
2013年4月13日0時23分 朝日新聞 http://www.asahi.com/politics/update/0413/TKY201304120487.html
小沢一郎・生活の代表 日本維新の会の党綱領は、占領時代に占領軍が絶対平和を押しつけた憲法だから変える、と。安倍(晋三首相)さんもね、同じような趣旨のことを従来から話していますね。前の安倍政権のとき、私は党首討論で「独立していない占領時代に米国から押しつけられた。日本国民の自由な意思で作ったのではない。だから憲法改正だということは、現在の日本国憲法を否定するんですね」と聞いたら、安倍さんは「いや、良いところは残すんだ」という答弁をしたんだよ。良いところを残すんだったら、占領軍から押しつけられたからけしからんという論理ではない。押しつけられたものでも良いところは残すんでしょ。ちょっと論理的に矛盾するんじゃないか。(大阪市で記者団に)

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TPP、農産品「例外」の余地 日米が合意文書発表 2013年04月12日23時16分 朝日新聞 http://www.asahi.com/business/update/0412/TKY201304120460.html
写真・図版 日米の合意で得られたものは? 写真・図版 TPP交渉の今後の流れ 写真・図版 TPP 環太平洋経済連携協定とは? 写真・図版 日本の農畜産物は「関税撤廃」で打撃を受けるおそれがある 写真・図版 各国がかける関税は、日本企業の負担になっている  日米両政府は12日、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加に向けた合意文書を発表した。日本の農産品と米国の工業製品の一部を「センシティビティー(重要項目)」として、関税を残す方向で一致。一方、自動車分野では日本側が大幅に譲歩した。日本は7月下旬にも交渉に参加できる見通しとなった。 安倍晋三首相は12日夕、首相官邸で開いた関係閣僚会議で「TPPはまさに百年の計。国益を実現するための本当の勝負はこれからだ」と強調した。今後は最後発という不利な立場にある日本が、参加国との交渉で主張をどこまで通せるかが焦点となる。  TPPは「関税の原則撤廃」を掲げているが、両政府は2月の日米首脳会談で「あらかじめ全ての関税撤廃の約束を求められない」とする共同声明を発表。今回の合意文書でも「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品といったセンシティビティーが両国にあることを認識する」と明記した。  しかし、焦点の自動車分野では米国が輸入する日本車にかける関税を維持するうえ、その期間も「最大限に後ろ倒しされる」と米国に有利なものとなった。米国は10年以上、日本車に関税を課す可能性がある。また米側が今後、日本の軽自動車の税制優遇を問題視する可能性も指摘された。  保険分野では、日本郵政傘下のかんぽ生命保険ががん保険など新商品を申請した場合、日本政府は当面認可しないことを表明。政府の信用力を背景にしたかんぽ生命の業務拡大を懸念する米側に配慮した。今後もTPP交渉と並行して協議を続けていく。  一方、TPPをてこに輸出を増やしたいオバマ政権は経済規模が大きい日本も加え、年内の交渉妥結を目指す。日本の参加が遅れれば妥結がずれ込む恐れがあるため、米側も合意に踏み出した。米議会内には自動車産業を後ろ盾とする一部議員らに日本の交渉参加に反対する声もあるが、大多数は歓迎の立場だ。  日本の交渉参加は、米政府が議会に通告してから90日後に決まる。通知までに2週間前後かかることも考慮すると、日本の参加は7月下旬以降となる。      ◇ ■TPP交渉参加をめぐる日米合意文書のポイント(日本政府発表) ●日米両国は経済成長促進、二国間貿易拡大、法の支配をさらに強化する ●TPP交渉と並行して非関税措置に取り組む。対象分野は自動車、保険、貿易円滑化など ●米国の自動車関税はTPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ最大限に後ろ倒しされる ●日本の農産品、米国の工業製品といった二国間貿易上のセンシティビティー(重要項目)が両国にある

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TPP日米合意:米通商代表部、日本の加入歓迎

毎日新聞 2013年04月13日 01時10分(最終更新 04月13日 02時33分) http://mainichi.jp/select/news/20130413k0000m020138000c.html  【ワシントン平地修】日本のTPP交渉参加に向けた日米事前協議合意を受け、米通商代表部(USTR)のマランティス代表代行は12日、「日本の加入は日米と環太平洋地域に著しい経済的利益をもたらす」と歓迎する声明を発表した。  同代表代行はその後、電話会見を開き、日本の交渉参加を米議会に通告する時期について「タイミングを考えるのは時期尚早」と指摘。日本に対して交渉参加国全ての同意の取り付けを急ぐように促した。また、日米合意でTPP交渉と並行して行うことを決めた非関税障壁などを巡る2国間協議については「TPP交渉と同時に終結させる必要がある」との考えを示した。

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首相「TPP交渉を主導」…日米事前協議が決着

(2013年4月13日00時00分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130412-OYT1T01060.htm
TPPに関する主要閣僚会議であいさつする安倍首相(12日午後、首相官邸で)=吉岡毅撮影  安倍首相は12日、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米間の事前協議で合意し、決着したと発表した。  米国が日本車にかけている関税の撤廃時期を最大限遅らせることなどが柱で、米政府は近く日本の交渉参加を米議会に通知する。90日間の手続き期間を経た後、日本は7月にもTPP交渉に参加する見通しとなった。  安倍首相は、主要閣僚会議で「日米の合意は国益を守るものだ。一日も早く交渉に参加して交渉を主導していきたい」とあいさつした。米政府は日本の参加承認を留保していた豪州、ニュージーランド、カナダ、ペルーから日本政府が同意を得られ次第、米議会に通知する。  焦点となっていた自動車の関税(乗用車2・5%、トラック25%)については、TPP交渉で認められる最も長い期間をかけて撤廃することで決着した。2012年に発効した米国と韓国の自由貿易協定(FTA)では、乗用車は5年、トラックは10年後に米国が関税を撤廃するが、これを上回る時間をかける。

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TPP、日米事前協議が決着…かんぽ新事業凍

(2013年4月12日14時45分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130412-OYT1T00717.htm
 日本の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米事前協議が12日、決着した。
 日本政府は同日夕から関係閣僚会議を開き、合意事項を確認したうえで安倍首相が今後の交渉方針を指示する。  合意内容は同日夜、甘利TPP相が記者会見して発表する。米政府は近く米議会に日本の交渉参加を通告米議会での90日間の「通告期間」を経て、7月中旬に日本の交渉参加が決まる見通しだ  日米事前協議の決着を受けて、国土交通省は簡単な手続きで輸入する車の上限引き上げを、金融庁は日本郵政グループ傘下のかんぽ生命保険の新規事業凍結をそれぞれ発表した  国交省は、輸入車の認証手続きを簡略化する「輸入自動車特別取扱制度」の対象を、従来の2000台以下から5000台以下に引き上げる  金融庁は、米国側の関心が特に強いがん保険について、かんぽ生命から新規事業申請があっても認可しないこととする

当方注: これはおかしい。自由主義経済の否定?   ☆☆☆

TPP交渉、保険・自動車など並行協議 日米合意発表
2013/4/12 20:45  日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1204Z_S3A410C1MM8000/
 政府は12日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加に向けた日米の事前協議が決着したと発表した。日米合意により日本は早ければ7月の交渉会合から参加できる見通し。事前協議では米国が強硬だった自動車分野と保険、食品の安全基準など非関税措置の分野で日本が譲り、TPP交渉と並行して日米協議も続けることになった。  安倍晋三首相は同日、首相官邸で開いた関係閣僚会議で「TPPは国家百年の計だ。一日も早く交渉に参加し主導していきたい」と表明した。 TPP交渉参加に向けた米国との事前協議での合意について記者の質問に答える安倍首相(12日午後、首相官邸) 画像の拡大 TPP交渉参加に向けた米国との事前協議での合意について記者の質問に答える安倍首相(12日午後、首相官邸)  交渉参加には参加11カ国の同意が要る。米政府は日本の交渉入りをまだ了承していないオーストラリア、ニュージーランド、カナダが同意したのを確認したうえで、米通商代表部(USTR)が日本の交渉参加を米議会に通知する。  後から参加したカナダとメキシコの場合、米国との事前協議決着から議会通知までは2~3週間。米議会はおおむね通知から90日後に参加を認める見通しで、日本の正式な参加決定は7月下旬になる可能性がある。  日米合意では日本のTPP交渉参加後、米国の要望が強い分野で2つの協議を続けることが決まった。一つは自動車貿易に関する協議だ。 「米の自動車関税撤廃、米韓FTAより長期間」。甘利経財相、日米合意受け記者会見(12日) 「米の自動車関税撤廃、米韓FTAより長期間」。甘利経財相、日米合意受け記者会見(12日)  今回、米国が日本の乗用車やトラックにかける関税の撤廃時期についてTPPで認められる限度まで長期間猶予することで一致。TPP交渉では関税を10年以内に撤廃する方向で議論が進んでおり、米国の関税撤廃に10年程度かかる可能性がある。日米協議では関税撤廃の具体的な時期のほか販売網や安全基準などを改めて話し合う。  さらに保険や食品の安全基準など非関税措置の分野でも協議を仕切り直す。日本の食品添加物の規制緩和などを想定するが遺伝子組み換え作物は対象としない。TPP担当を兼務する甘利明経済財政・再生相は記者会見で「食の安全安心に関する基準はしっかり守る」と強調した。  国内の農家が懸念する関税では、日本の農産品と米国の工業製品が「2国間貿易上のセンシティビティ(強い関心事項)」であるとの認識を共有した。首相は閣僚会議で「日米の合意は日本の国益を守るものだ」と述べたが、本交渉では高い水準の自由化を目指すTPPの理念を損なわない姿勢が必要になる。

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アメリカに対して、「満額回答」

TPP日米事前協議の合意内容

4月13日 0時42分 NHK

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130413/k10013886111000.html

TPP=環太平洋パートナーシップ協定を巡り、今回、日米の事前協議で合意された内容です。 自動車分野では、日本の車の流通制度やエコカーを対象にした補助金制度などについて、TPP交渉と並行して日米間で別に交渉していくことになりました。
交渉の対象となるのは、輸入車によって自国の自動車メーカーが打撃を受けた場合に発動する「緊急輸入制限措置」、自動車の輸入や販売で政府が規制を策定する際の手続き環境や安全の基準、書類だけの簡易な審査で外国車の販売を認める制度の拡充、電気自動車などエコカーの輸入、販売で外国車を差別的に扱わないための枠組み、自動車の流通制度、エコカーなどを対象とした政府による補助金制度など9項目を挙げています
一方、アメリカが日本車にかけている関税については、TPP交渉で認められる最も長い段階的な引き下げ期間で撤廃され、かつ最大限に後ろ倒しされるとして、可能な限り猶予期間が設けられるという内容です。
これに加えて、アメリカの関税撤廃までの期間は、乗用車は5年、トラックは10年としているアメリカと韓国が締結したFTA=自由貿易協定の中での取り決めよりもアメリカにとって実質的に有利になることなどを確認したとしています。
一方、今回の合意では、非関税措置について保険や投資など9つの分野で、自動車分野と同じようにTPP交渉と並行して日米間で協議していくことが合意されました。
具体的には、アメリカ側が「競争条件が公平ではない」などと指摘している日本郵政傘下のかんぽ生命保険をはじめとした「保険分野」、貿易の手続きを簡素にする「透明性と貿易円滑化」、「投資のルール」、「知的財産権」、工業製品などの「規格や基準」公共事業などの「政府調達」企業などの競争を促す「競争政策」、「宅配便」、「食品の安全基準」です。
このうち、「食品の安全基準」について政府は、WTO=世界貿易機関のルールに沿って、各国が基準を設けられるという前提で協議するとしているほか、遺伝子組み換え食品を巡ってはアメリカ側から問題を提起されていないと説明しています。
日米間で行う協議は日本のTPP交渉参加と同時に開始し、双方が合意した内容は新たな協定や法令の改正などを通じてTPPが発効する時点から実施するとしています。
さらに、合意文書では日本には一定の農産品、アメリカには一定の工業製品といった配慮すべき品目が両国にあることを認識しながらTPPのルール作りで緊密に取り組むことなどを盛り込んでいます。このほか、これまでの日米協議を踏まえ、自動車分野では、日本が簡単な書類上の審査だけで外国車の販売を認める台数を1つの型式当たり年間2000台から5000台に増やしました。
また、保険分野を巡っては麻生副総理兼金融担当大臣がかんぽ生命が、がん保険など新規業務の認可を申請しても民間との適正な競争関係が確保されなければ認可しないという考えを示しました。

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民主主義を機能不全に陥らせた
「一票の格差」がもたらす3つの弊害

――慶應義塾大学教授 小林良彰

【第18回】 2013年4月12日 ダイヤモンド http://diamond.jp/articles/-/34573

 昨年12月の衆議院選挙で最大2.43倍だった「一票の格差」をめぐり、各地で違憲、選挙無効の判決が相次いでいる。現在、自民・公明党が「0増5減」の衆院小選挙区調整の推進を急いでいるが、この法案が実現しても「一票の格差」は解消されないとも言われているなか、今度どのように是正を図ればこの定数不均衡問題を解決できるのか。慶応義塾大学法学部・小林良彰教授が「一票の格差」がもたらす3つの弊害を明らかにしながら、真の意味で民意が反映される新たな選挙制度を提示する。
一票の格差で揺らぐ 「法の下の平等」

こばやし・よしあき
1954年東京都生まれ。慶応義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。法学博士。ミシガン大学、プリンストン大学、カリフォルニア大学バークレー校、ケンブリッジ大学ダウニング校などで研究教育に従事。慶応義塾大学法学部教授を経て、現在、日本学術会議副会長ならびに慶応義塾大学と横浜国立大学で政治学及び公共政策論を担当。最新著に『
政権交代―民主党政権とは何であったのか』(中公新書)がある。
 政治的平等は、民主主義的な市民社会を構成する重要な要件の1つであり、日本国憲法第14条でも「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と「法の下の平等」が明記されている。それにもかかわらず、現在の選挙制度下では「法の下の平等」が守られていない恐れがある。  90年代の政治改革で成立した衆議院議員選挙区画定審議会設置法では、衆議院小選挙区の改定案作成基準を定めた第3条第1項で「各選挙区の人口の均衡を図り、各選挙区の人口のうち、その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が二以上とならないようにすることを基本とし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない」と「法の下の平等」の原則を遵守するように規定している。その一方で、次の第2項では「法の下の平等」を逸脱する可能性がある「1人別枠方式」(300ある衆院小選挙区の議席のうち、47議席を各都道府県に1議席ずつ配る仕組み)を定めている。つまり、衆議院議員選挙区画定審議会設置法第3条第1項と第2項が「一票の格差」という観点ではお互いに矛盾する可能性を含んでいる。  こうした定数不均衡の問題については、これまで法学的な視点から議論されてきたが、ここでは不均衡が具体的に有権者にどのような不利益をもたらしているのかを明らかにしたい。  定数不均衡がもたらす代議制民主主義の歪みを検証するにあたり、次の3つ視点からみていく。まず、第一に、定数不均衡により選挙に際して有権者から負託される民意について、どのような分野の政策が過剰に代表され、またどのような分野の政策が過少に代表されているのか。第二に、定数不均衡により、当選後の国会における発言や法律案への投票におけるどのような歪みが生じているのか。第三に、定数不均衡が予算や歳出などの政策にどのような歪みをもたらしているのか。なお、最後に、こうした定数不均衡の問題を解決する提言を示したい。
増税は過剰代表、社会福祉は過少代表に
一票の格差による「民意の負託の歪み」
 それでは第一に、定数不均衡により選挙に際して有権者から負託される民意、具体的には有権者に提示された選挙公約について、どのような分野の政策が過剰に代表され、またどのような分野の政策が過少に代表されているのかをみてみよう。  まず、2005年及び2009年の衆議院議員選挙の小選挙区で当選した全ての候補者が選挙公報において有権者に提示した選挙公約を収集。それらを16の政策領域(社会福祉、保健衛生、生活保護、教育労働、防衛、外交貿易、農林水産、商工鉱業、運輸通信、地方自治、住宅中小、国土環境、一般行政、司法警察、国債、その他)における予算の増減、ならびに6つの特別な争点(年金、増税、格差問題、後期高齢者医療制度、憲法改正、郵政事業)毎に内容分析し、各選挙における選挙区選挙で選出された国会議員がどのような民意を負託されているのかを調べた。そして、各当選者の選挙公約に当該選挙区の定数不均衡値を掛け合わせて定数不均衡がない場合の国会を想定し、どのような民意が負託されているのかの期待値を仮想的に算出した。その上で、両者を比較することで、負託される民意に対して定数不均衡がもたらす歪みを求めた。  その結果、2005年衆院選小選挙区で当選した国会議員は、運輸・通信、農林水産、一般行政などの予算増額及び増税と郵政民営化について過剰代表されている一方、社会福祉や司法・警察、商工鉱業、などの予算増額については過少代表されていることが明らかになった。
防衛に関する言及は過剰代表に
一票の格差による「国会の歪み」
 次に、2005年及び2009年の衆議院議員選挙で当選した全ての国会議員が、その後の国会でどのような発言をしているのかを調べるために衆議院の本会議及び全ての委員会の議事録を収集して、前述の16項目の政策領域別に内容分析した。また、そうした国会議員が議会に提出された法律案に対してどのような投票を行ったのかについてもデータを収集した。  具体的には、2005年衆院選小選挙区当選者については、2005年9月21日に招集された第163回(特別会)から2009年 7月21日に閉会した第171回(常会)までの衆議院本会議及び全ての委員会における全ての発言を収集して、選挙公約と同様に内容分析した。また、2009年年衆院選小選挙区当選者については、2009年9月16日に招集された第172回(特別会)から2011年12月9日に閉会した第179回(臨時会)までについて同様の内容分析を行った。  そして、各当選者の発言に当該選挙区の定数不均衡値(1/(一票の重さ))を掛け合わせて定数不均衡がない場合の国会を想定し、どのような発言をしているのかの期待値を仮想的に算出した。その上で、定数不均衡がある実測値と定数不均衡がない場合の期待値両者を比較することで、定数不均衡がもたらす国会での発言の歪みを求めた。  まず、衆議院本会議における衆院選小選挙区選出議員の発言をみると、2005年当選者では定数不均衡による教育・労働や社会福祉、保健衛生などの予算増額が過少代表される一方、防衛に関する言及が過剰代表されていることが明らかになった。  2009年当選者についてみると、2005年当選者とほぼ同様の傾向をみることができる。なお、衆議院本会議に全ての衆議院委員会での発言を加えると、防衛や農林水産、国土環境などに関する言及が過剰代表される傾向をみてとることができる。  なお、こうした国会の本会議や委員会における発言を行う機会は、全ての国会議員に与えられているわけではなく、特定の議員に限られている。そこで、次に2005年及び2009年の衆議院議員選挙で当選した全ての国会議員が、その後の国会に提出された法律案に対してどのような投票を行っているのかを調べ、定数不均衡がない場合に想定される期待値と比較することで政策形成の歪みを明らかにすることを試みた。  まず、衆院選小選挙区選出議員による投票結果を定数不均衡がない場合の期待値と比べてみると、2005年衆院選当選者で「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律案」への賛成が過少代表されていることが明らかになった。その一方、政府関係者への解任決議案への賛成が過剰代表されていることがわかる。
一票が重い選挙区ほど地方交付税を多く配分
一票の格差による「政策の歪み」
 さらに、こうした定数不均衡が予算や歳出などの政策にどのような歪みをもたらしているのかを明らかにするために、衆議院については全国の1700余の市町村に対する補助金や交付税、及び同市町村における歳出に関するデータを収集して小選挙区単位に集計し直し、各小選挙区における一票の格差との間に関連がみられるかどうかを明らかにした。  その結果、様々な補助金や交付税、及び歳出項目のうち、2度の衆院選における小選挙区の一票の重さとの間に関連がみられたのが、特別交付税及び農林水産費と普通建設事業費であった。例えば、2005年衆院選及び2009年衆院選の小選挙区における一票が重い選挙区(つまり、人口に比して過剰代表されている選挙区)ほど、農林水産費や普通建設事業費が多く支出されている。
投票結果で定数が決まる
「定数自動決定式選挙制度」の提唱
 これまでみてきたように、国政選挙における定数不均衡は民意代表性の歪みを生じさせ、国民の代表による国会での議論にも歪みを生じさせ、それが政策上のバイアスとなって各選挙区にもたらされることにもなりかねない。こうしたことから、定数不均衡の是正が喫緊の課題であることは言うまでもない。しかし、小選挙区制の下で定数是正を行うためには選挙区の区割りを変更するしか方法がなく、当該小選挙区だけでなく周辺の小選挙区にも多大な影響を与えるために、多くの政治家の強い反発を招き、定数不均衡が改まらないでいる。これでは、将来にわたり生じる新たな定数不均衡に対応することは不可能と言えよう。  そこで、日本の代議制民主主義が定数不均衡によって歪められることがないように、各選挙区の定数が投票の結果によって自動的に決まる「定数自動決定式選挙制度」を提唱することにしたい。この方式は、様々な単位の選挙区に適用することができる。具体的には、選挙は次のようにして行われることになる。 ⅰ、新しい選挙区は、都道府県(ただし、地域の広い北海道や、人口の多い東京都などは分割)、もしくは衆議院で用いられてきた中選挙区など人為的な恣意性が新たに入らないものを用いる ⅱ、各政党は、選挙区毎に順位を定めずに名簿を作成する。 ⅲ、有権者はこの名簿の中から候補者を選んで個人名を書いて投票するか、あるいは政党名だけを書いて投票する。 ⅳ、選挙後、各選挙区における各候補者、あるいは各政党の投票を、政党別に全国で集計する。 ⅴ、全国で集計された得票にしたがって、ドント式により各党に議席を配分する。 ⅵ、各党に配分された議席を、さらに各党の各選挙区における得票に応じて、最大剰余式により各選挙区に配分する。つまり、下記の通りになる。                      各党各選挙区得票数
  各党各選挙区議席数=各党全国議席数 X ―――――――――
                      各党全国得票数
ⅶ、各党の各選挙区に配分された議席を、その選挙区におけるその党の候補者の得票の多い順に与える  なお上記において、各選挙区への議席配分を最大剰余式ではなくドント式で行うと、各選挙区間の定数格差が1対2を越える場合が生じるために最大剰余式を用いることにした。  さて、この定数自動決定式選挙制度の長所は、次の4点である。第一に、「民意が反映される」ことである。各党の議席数を比例代表にしたがって配分するので、得票率によって議席率が決まることになる。  第二に、「定数不均衡がない」ことである。つまり、選挙区の得票数に応じて議席数が決まるので常に自動的に見直しが行われるため、憲法第14条で定められている「法の下の平等」を満たすことになる。現在の我が国では、定数是正が国会議員に任されているため、その是正には長い年月がかかっている。このため、ひとたび是正を行った後にすぐにまた新たな不均衡が生じても、これに機敏に対応することができない。したがって、自動的に不均衡が是正されるような制度が、我が国には必要であると考えられる  また、これまで定数は人口に応じて配分されてきたが、本来の意味では、人口の格差ではなく一票の格差こそを是正すべきではないか。仮に、投票率40%と80%の選挙区があるとすると、人口あるいは有権者人口に応じて定数を配分した場合、投票率40%における一票の価値が80%における一票の価値の2倍になってしまう。すると、いくら人口や有権者人口に応じて定数を定めても、別の意味での一票の格差が生じることになる。したがって、投票に応じて定数を定める方式が求められる。  第三に、「党利党略が入らない」ことが挙げられる。この選挙方式では、小選挙区を必要としないためにゲリマンダーの弊害が生じない  第四に、「有権者の意識が高まる」ことである。投票率が議席数に反映されるために、投票するインセンティブが有権者にもたらされるわけである。代議制民主主義の機能改善を求める以上、政党や政治家ばかりでなく有権者も努力することが必要である。  こうした選挙制度の導入により定数不均衡問題を解消することで、法の下における政治的平等が担保され、より良い代議制民主主義が実現することを願う次第である。 参考引用文献:小林良彰「議員定数不均衡による民主主義の機能不全」『選挙研究』28巻2号、木鐸社、2012年

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Astronomy Picture of the Day


Discover the cosmos! 2013 April 12 See Explanation.  Clicking on the picture will download
 the highest resolution version available. Yuri's(Yuri Alexseyevich Gagarin) Planet

Image Credit: ISS Expedition 30, NASA

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妻純子の状況:悪なりにほぼ安定してきたようである。

医師が、改善のため、懸命に努力しているが、その労が報われるよう祈っている。

・・・・・本日は、これまで・・・・・

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