2011年5月16日月曜日

東電は、「外部電力の喪失」を真剣に噛み締めよ!   「復興増税」か「インフレ」か ? 今の日本にふさわしいのはどちらなのか

木村建一@hosinoojisan

東電は、「外部電力の喪失」を真剣に噛み締めよ!

「復興増税」か「インフレ」か

今の日本にふさわしいのはどちらなのか


 東京電力は15日、福島第1原発1号機で、地震発生から16時間後の3月12日午前6時50分ごろには大部分の燃料が原子炉圧力容器の底に溶け落ち、全炉心溶融(メルトダウン)を起こしていたとの暫定評価を発表したが、これは、私たちが、当初から指摘していた問題である。
 この暫定評価には、もう一つ重大な問題を隠ぺいしていると言っておこう。
 それは、「外部電力」の喪失問題である。
 外部電力が、生きていれば、これほど深刻な事態を招かなかったのだが地震対策の不備」を覆い隠すために、想定外の「津波」ということで、責任逃れを行っていると指摘しておきたい。
 さて、「消費税増税」を目的とした復興会議(議長・五百旗頭(いおきべ)真防衛大学校長)が、迷走をしているようである。
 産経新聞によると、「「日本の英知」を結集した委員の議論もよく言えば自由奔放、要はバラバラ。6月末にまとめる第1次提言の意見集約は難航必至で、「アイデアの羅列になる」との懸念は消えない。」と報道されているように、「復興」とはほど遠いものとなっている。その結果が、「増税論議」では、被災地住民は、やるせない思いを強めているだろう。
 現時点で、消費税を増税すれば、日本経済は、確実に、「レベル7」にの引き金になり、経済は、深刻な事態を招くこととなろう。
 この点で、日経ビジネス誌に、三橋貴明氏が説得力ある論文を発表されているので、記録しておきたい。
 

「復興増税」か「インフレ」か

今の日本にふさわしいのはどちらなのか
2011年5月16日(月) 日経ビジネスhttp://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20110510/219901/?bv_ru&rt=nocnt
 3月11日に東日本大震災が発生し、早期の復興を実現するための財源が議論になっている。予め書いておくが、大震災からの復興財源を「増税」に求めた国など、歴史上、1つも存在しない何しろ、震災で国民の支出意欲は萎縮しているのに、増税はそれに拍車をかけるのである
 「復興財源を税収で賄う」とは、国民経済から生み出される付加価値、すなわちGDPから政府に分配される付加価値の取り分を増やし、それを復興財源に充てるという話である。ただでさえ萎縮している国民の支出意欲を削ぐと、結局は増税分の効果がGDPの低成長により相殺され、政府の税収が前年比マイナスになってしまう。
 実際、1997年に消費税率が引き上げられた際、三大税(所得税、消費税、法人税)の合計は、逆に下がってしまった。財政健全化を求めて「増税」をした揚げ句、減収になってしまったのである。当然の成り行きとして、財政は健全化されるどころか悪化した。
図1-1 1997年と98年の三大税の比較(単位:円)
消費税 所得税法人税三大税合計
1997年7兆4644億20兆7104億13兆5004億41兆6752億
1998年8兆4235億17兆4210億12兆0210億37兆8655億
出所:国税庁
 上記の通り、97年から翌年にかけ、確かに消費税は増えたのだが(税率がアップしたため、当然だ)、所得税と法人税は大きく落ち込んだ。結果、三大税(消費税、所得税、法人税)の合計は、1997年が41兆6752億円、1998年が37兆8655億円と、4兆円近くも減少してしまったのである。
復興予算さえまともに執行できなくなる
 断っておくが、筆者は別に「増税」について、イデオロギー的に反対しているわけでも何でもない。増税することで財政健全化や「復興と成長」が本当に実現できるのであれば、むしろ率先して賛成する。
 とはいえ、デフレ環境下にある国において増税を実施しても、単に民間の支出意欲や借り入れ意欲を削ぎ、GDPを削り取るだけの話だ。結果、98年の事例が示す通り、政府の税収はむしろ減り、財政は増税以前よりも悪化する羽目になる。
 また、震災復興の財源を消費税増税で補おうとすると、国民の経済活動の縮小を招き、やはり税収が減ることになる。結局は、復興予算さえまともに執行できなくなり、成長はおろか、復興さえもおぼつかない有り様になるだろう。
 もし、現在の日本がインフレであるならば、話は全く別だ。
 国内の供給能力が不足し、需要を抑制する必要があるのであれば、増税は1つのソリューション(解決策)になり得る。あるいは、歴史的に前例がないとは言え、日本がインフレ環境下にあるならば、復興の財源を増税に求めることは検討に値するかもしれない。とはいえ、現実の日本はデフレに悩んでいるのである。
 デフレという、国民の支出意欲が低迷している状況で、さらに国民の支出意欲を縮小させる大震災が発生した。その上で、さらに国民の支出意欲を削ぎ取る増税をして、いったい政府は何をしたいというのだろうか。
消費増税の理由が猫の目のように変わる
 思い出して欲しい。民主党は消費税アップについて「4年間は議論もしない」と宣言し、政権を取ったはずである。ところが、2009年末頃から、消費税アップの議論が、まさに降って湧いたように次々と出てきている。しかも、「消費税アップの理由」が、毎回、違うのだ。
 2009年下旬、当時は経済財政政策担当大臣の座にあった現首相の菅直人氏は、
「景気対策として財政出動をするために、消費税アップを」
 などと言い出した。消費税アップでGDPの民間最終消費支出を削り取り、同じくGDPの公的固定資本形成(公共投資)として支出するという話だ。まさしく、パイの一部を切り取り、別のところにくっつけるだけという話で、率直に言って意味不明であった。
 ところが、2010年6月に鳩山前首相が辞任し、菅氏が首相の座に就くと、今度は、
「ギリシャは財政破綻した。日本の財政状況はギリシャよりも悪い。だから、消費税をアップする」
 などと主張し始めた。経常収支黒字国、世界最大の対外純資産国である日本の「自国通貨建て国債」を、経常収支赤字国で、対外純負債国であるギリシャの「共通通貨建て国債」と混同するという、マクロ経済的にとんでもないレトリックを用い、2010年7月の参議員選挙に挑んだ。そして、結果的に民主党は敗北した。
 これで、消費税アップの話はなくなったのかと思いきや、今度は「税と社会保障の一体改革」などと言い出した。またもや、目的は消費税アップである。
 「財政出動のための消費税アップ」「ギリシャのように財政破綻しないために消費税アップ」「社会保障のために消費税アップ」と、消費税を上げる理由が、まさしく猫の目のようにクルクルと変わる。要するに、消費税をアップするという結論が決まっており、そのための理由を、その当時のトピックスに合わせて「作り込んでいる」だけという話だ。
 そして、今度はついに「東日本大震災から復興するための消費税増税」である。歯に衣を着せずに言えば、震災を利用して」元々の政治的意図である消費税アップを実現しようとしているとしか思えない。
 しかも、今回の復興増税論に際しては、
「東日本大震災復興の負担を国民で分かち合うために、消費税アップ
 という、日本国民が反対しにくいレトリックを用いている。何というか、正直「そこまでやるか」と嘆息する以外に、感想の言葉が出てこない。
最もやるべきではない「期限付き増税」
 特に問題なのが、復興増税議論の中に「期限付き」を主張するものがある点だ。すなわち、
「震災からの復興のために、3年間だけ消費税をアップする」
 といった、期限付き増税論である。
 デフレ期において「3年間増税」をした場合、国民は単に大型の支出を3年後に先送りするだけの話であろう。期限付きの増税は、現在の日本が最もやるべきではない政策といえる。
 ちなみに、筆者は今回の震災の復興の負担を、日本国民で分かち合うというコンセプトには賛成だ。とはいえ、消費税アップはその手段として適当ではない。別に消費税を上げずとも、一見「消費税アップ」と同じように見え、かつ、現在の日本にふさわしい政策があるのである。
 それは、ずばり「インフレ」である。
 インフレと言っても、別に「特別なこと」をする必要はない。単に、政府が建設国債を発行し、必要があれば日銀が金融市場から国債を買い取ったり、日銀が国債を直接引き受けたりすればいい。こうして、日本がデフレからの脱却を果たすことで、国民全体で復興の負担を分かち合えるのである
デフレからの脱却の道が見えてくる
 このように書くと、
「日銀が国債を直接引き受けることは、法律で禁じられている!」
 などと「嘘」を言う人が出てくるが、日銀の国債引き受けは、国会議決の枠内であればできる。財政法第五条にそう書いてあるのだ
『財政法第五条
 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。』

 日銀による国債引き受けは、「特別の事由」があれば、国会議決により可能になる。今回の東日本大震災のような大災害が「特別の事由」でなくて、いったい何だというのだろうか。
 日銀が国債を引き受け、マネタリーベースを拡大すると、社会全体のお金の量が増え、CPI(消費者物価指数)は上昇に向かうだろう。すなわち、ようやく日本経済の「真の問題」であった、デフレからの脱却の道が見えてくるわけだ。

画像のクリックで拡大表示
 図1-2の通り、日本の消費者物価指数は2009年以降、ほとんどの月で対前年同月比マイナス、もしくはゼロ近辺をさまよっている。これは完全に「政府の政策の失敗」である。
 何しろ、2008年9月のリーマンショック以降、日本のみならず、主要国の多くがデフレ(CPIがマイナス成長)に陥ったのだ。中国に至っては、一時は日本をも上回るほどにデフレが深刻化していた。
 とはいえ、日本以外の主要国は、政府がデフレ対策を実施した結果、1年もかからずにCPIをプラスに戻している。唯一、日本のみが、CPI成長率がゼロ、もしくはマイナスの領域をさまよっているのだ。これが政策の失敗でなくして、何だというのだろうか。
日本は「通貨の信任」が強すぎる
 日本のデフレ深刻化の原因は、国内の需要不足及び「社会全体のマネーの量」の不足である。
 財務省は「省益」のための増税を実現するべく、マスコミに財政破綻論を煽らせ、政府の需要創出(公共投資など)を妨害しているとしか思えない。そして、日銀は日銀で「通貨の信任」などという曖昧な理由で、マネタリーベース拡大(国債買取など)を否定し続ける。
 アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)はリーマンショック以降、、政府保証債(GSE債)や長期国債の買い取りにより、マネタリーベースを3倍近くにまで拡大している。それに対し、日本銀行はマネタリーベースをほとんど増やしていない。
 世界に流通するドルの量が増え、日本円はほとんど増えないのである。ドルなどの主要通貨に対し、日本円の価値が上昇して(=円高になって)いくのは当たり前である。現在の日本は「通貨の信任」が強すぎるのである。
 今日の日本経済は、デフレと円高(と言うか、デフレゆえの円高)に苦しんでいるが、政府が「やるべきこと」をやらない以上、当然の結果だ。
 デフレ脱却には、政府の財政出動と日銀の金融緩和を「パッケージ」で行わなければならない。政府が公共投資などで不足する需要を補い、日銀がマネーを金融市場に供給することで、金利の上昇を抑える。日銀のマネタリーベース拡大に、政府の需要創出が加わり、初めて民間の借り入れ意欲や支出意欲が高まり、日本はようやくデフレからの脱却を果たせる。
「増税」ではなく「増収」が達成される
 上記はデフレ脱却のための、まさに「普通の政策」なのだが、なぜか日本では「増税」やら「ムダの削減」やら、デフレを深刻化させる「インフレ対策」ばかりが声高に叫ばれる。日本のインフレ率が健全な範囲を越えて上昇したのであれば、筆者は「増税」や「ムダの削減」に全く反対しない。と言うか、むしろ率先して、
「政府は公共投資を削減しろ! 増税で財政健全化だ!」
 と主張するつもりである。何しろ、政府の支出削減や増税などの総需要抑制政策こそが、まさに代表的なインフレ対策であるためだ。
 繰り返すが、筆者はイデオロギー的に増税やムダの削減に反対しているわけではない。単に、環境に応じて適切なソリューションは異なるという、当たり前の話をしているに過ぎない。
 今回、東日本大震災が発生し、政府は早急に復興のための支出(公共投資など)を拡大しなければならない。まさしく、現在の政府が「普通の政策」すなわち国債発行と日銀のマネタリーベース拡大、さらには復興事業のために支出を拡大すれば、日本はついにデフレを脱却できる可能性があるのだ。何しろ、それこそがオーソドックスなデフレ対策であるためである。
 日本がデフレ脱却を果たせば、名目GDPの成長率が高まり、政府の税収も増える。「増税」ではなく「増収」が達成されるわけである。結果、被災地の復興のための財源も、中期的に拡大していくことになる。
 さらに、復興増税論者が好んで使うフレーズである、
「東日本大震災復興の負担を国民で分かち合う」
 についても、そのまま実現できるのだ。デフレ脱却のための「普通の政策」に反対する理由が、さっぱり分からない。
 ところで、デフレ脱却がなぜ「国民全体で復興負担を分かち合う」ことになるのだろうか。もちろん、日本がデフレを脱却すれば、物価が上昇を始めるためだ。
インフレは国民の支出意欲を高める
 ここで、
「インフレで物価が上がるなんて嫌だ!」
 と、反射的に思った人は、落ち着いて考えてみて欲しい。
 例えば、消費税を1%引き上げると、自動的に物価が1%上がる。また、日本がデフレを脱却し、インフレ率が1%になった場合も同様だ。物価が1%上がる
 表面的な現象は「物価が1%上がる」であって、同じに見えるわけだが、消費税アップとインフレには、1つ決定的に違う点がある。それは、増税は国民の支出意欲を削ぐことになり、インフレは国民の支出意欲を高める効果があるという点である。
 デフレ期に増税をすると、国民の支出意欲が削がれるという点については、あまり反対する人はいないだろう。デフレ期には失業率が高まり、平均給与が下がる(実際に下がっていっている)。しかも、物価が継続的に下落するわけであるから、支出を先送りすると「より安く買えるかも知れない」という心理が働く。
 そんな環境下において、支出意欲が高まる人は極めて少数派である。増税を受け、普通の人は単に「お金を使うのを止める」という選択をし、使われなかったお金は「将来のために」などの理由で貯蓄に回るだろう。
 それに対し、インフレは増税と真逆の国民心理が働く。何しろ、
「今、買わなければ、来年はもっと高くなってしまうかもしれない」
 のである。
 ちなみに、不動産バブルが継続している中国では、一般の国民が、年収の30倍もの不動産購入に「群がる」という、異様な光景が見られる。理由は極めて簡単で、現在の中国はインフレが続いているためだ。当然、不動産価格の高止まりしており、国民は、
「今年、マンションを買わなければ、来年はもう買えない値段になってしまうかもしれない」
 と考え、高騰した不動産購入に殺到しているわけだ。
適切な政策はどちらなのか
 中国レベルにまでいくと、さすがに極端だが、「先々は高くなるかもしれない」という心理は、国民の現在における支出意欲を高めることは確実だ。
 さて、まとめると、
◆消費税増税:事実上の物価上昇により、震災復興の負担を国民が分かち合うことができる。同時に、国民の支出意欲は削がれる。
◆インフレ(「普通の政策」による):物価上昇という形で、震災復興の負担を国民が分かち合うことができる。同時に、国民の支出意欲は高まる。
 デフレに苦しむ現在の日本にとって、適切な政策はどちらなのか、という話である。
 菅政権とりわけ財務省の諸君は、発想を変えて、創造性ある対応に目を向けるべきであろう
 国会論議の中で、自民党から、公明党、日本共産党、社民党までの野党は勿論、与党の民主党、国民新党の皆さん方も、この意見を真剣に検討すべきと思われる。
・・・・本日は、これまで・・・・

0 件のコメント:

コメントを投稿